怪しい話

  

『日本の数字』を執筆するなかでわかってきた問題点を、私なりにまとめて、順に書いていきたいと思います。(著者:松尾義之)

  ●《外国為替市場はラスベガス》……2004.10.27
  ●《郵政民営化は多国籍企業の陰謀?》……2004.10.27
  ●《公私混同と民営化》……2004.10.27
  ●《米国債を売って、新潟県中越地方の復興資金にしよう!》……2004.10.27
  ●《Newsweek世界国力ランキング》……2004.10.28

●怪しい話−−その1……2004.10.27


《外国為替市場はラスベガス》


 数字を知ると、本当に、世界のインチキ加減がよくよく見えてきます。
 全世界の金融資産は7000兆円もあります。有り余っています。一方、お金は利子を生まないといけないことになっています。しかし全世界のGDP合計は3000兆円しかありません。これで、どうやって金融資産の金利が稼げるのでしょうか。どこに「投資先」が残っているのですか? 算数の問題です。
 マジメな話です。行き場を失った「お金」は、もうギャンブルで稼ぐしかない!のです。『日本の数字』にはあげてありませんが、外国為替市場の取引額のデータをお教えします。国際決済銀行(BIS)が発表しているレポートによると、毎日、1.9兆ドル、つまり200兆円もの為替売買が行われているのです。この数字で注意すべきは、「毎日」であって、「毎年」ではないということです。年にすれば、7京6285兆円という、まさに天文学的な数字になるのです。
 これは7000兆円の10倍強、ということです。金融の専門家はご存知と思いますが、このレポートは「Central Bank Survey of Foreign Exchange and Derivatives Market Activity in 2004」で、インターネットで読めます。
 このような「外国為替市場」など「市場」とは言えません。笑っちゃいます。なぜなら、本当の需要も供給も存在せず、度胸とハッタリとインチキ・ディーラーによるルーレット台でしかない、とデータからわかるのです。なのに「市場にまかせる」と堂々と発言する前・金融大臣を何と呼べばよろしいのでしょうか?


●怪しい話−−その2……2004.10.27


《郵政民営化は多国籍企業の陰謀?》

 
 世間を賑わせている「郵政民営化」ですが、おそらく、この問題の本質を見抜いている人は少ないと思います。そこでデータから1つの“仮説”を提示します。結論は、表題にあげた「多国籍企業の陰謀」です。
 前項で、世界にいかにお金が溢れているかをデータで示しました。では、そのお金(金融資産)はどういう形になっているか、です。
 実は、7000兆円の金融資産の6割をアメリカが持っています。日本が2割、英独仏で2割です。そのアメリカは1600兆円を株式市場の形で持っています。それとほぼ同額を債券やデリバティブで持っていると推定されます。このお金が実に怪しいのです。
 GDPが日本の2倍しかない国の株価時価総額が、なぜ日本の300兆円という株価時価総額の5倍もあるのか。たぶんバブル。だから、どうにかして「安全な投資先」に移したい、と考えます。これは金持ちも貧乏人も同じでしょう。
 このいちばんよいところが「健全な国営企業」です。税金で育てられ、しかもその国民に必要不可欠なものであれば倒産するはずがないからです。
 実際、投資先を失った世界の大金持ちと多国籍企業は、国営企業の民営化という「悪魔の仕業」を世界規模で仕掛けています。確実安全な「お金」の行き先が必要だからです。そして、最終目標が公共財の私物化なのです。
 よくよく調べてください。郵政事業とは公共のためのサービスです。民間の宅配便業者が倒産せずにこのサービスを一律料金でできるはずはありません。また、倒産の危機に直面した民間企業が、倒産を覚悟の上でサービスをすることなど、そもそもありえないのです。
 では、郵便事業を担っている人は、まじめに働いていないのですか? 山奥の一軒家まで手紙を運んでいないのですか? そうではないのです。公共サービスというのはそういうものであって、何もそこから利益をあげる組織体ではないのです。それによって、社会の豊かさの基盤が与えられるものだからです。
 郵便貯金の話もウソです。その総額は、たかだか、日本の全金融資産の1割でしかありません。これで「民業圧迫」しているわけではなく、日本の金融機関がそもそも、もうまともな投資先を確保できないのです。お金が有り余っているからです。そんな中に、さらに民間資金が増えてしまったら、ますます金利は稼げなくなります。
 もう1点。よしんば、郵政の民営化というなら、この事業はそもそも国民の税金で維持されてきたものですから、全国民に1株ずつでも無償配布すべきものです。少なくとも、そういう考え方があってもおかしくありません。ところが、アメリカという国は、税金でお金のかかる事業の立ち上げをやり、それをすぐに民間に二束三文で払い下げてしまうという歴史を積み重ねてきた国なのです。それを「ドロボー!」と強烈に批判したのが、かの「宇宙船地球号」を提唱したバックミンスター・フラーだったのです。
 郵政の民営化を強行する小泉さん。御自身が悪魔の手先になっていることを御存知なのでしょうかネ。その背後にある新自由主義者の陰謀を、アメリカやヨーロッパの知識人は見抜いています。


●怪しい話−−その3……2004.10.27


《公私混同と民営化》


 「公私混同をしてはいけない」という倫理観を私たちの社会は持っています。公人、たとえば政治家や官僚がワイロを貰ったりすると批判され、逮捕されるのは、法律で決まっているからだけではありません。その根底に、「公共」のものと「私的」なものは、明確に分けなければいけない、という考え方があるのです。
 民間企業はよく、血のにじむような思いをして節約しているのに、役所は何も努力していない、という言い方がなされます。本当にそうでしょうか?
 例えば、いま起こっている新潟県の地震です。役所、警察、消防署のみなさんは、自分の家に障害があっても、被災者の救援にあたっています。これはなぜでしょうか。「公共のサービス」に従事する人々の役割だからです。血のにじむような努力をされているのです。もし民間企業であれば、このようなサービスをする必要はありません。会社を休んで自分のことだけやっていても、他人から批判されることは、基本的にありません。
 何が言いたいかというと、「公私混同」というのは、何も個人的なことなのではなく、社会的役割としての「公」と「私」はまったく異なることであって、それぞれが追求する価値観も異なるのだ、ということです。
 「公」にとって最も大事なことはサービス(奉仕)であって、利益をあげたり、効率をあげることではありません。一方、「私」にとって最も大事なことは、利益をあげることで、だからそのために効率を、求めるのです。
 そして、ここが最も大事なことですが、このような「公」と「私」は、最も基本的な部分において、絶対に相容れることはない、ということです。公共サービスと利潤追求は、絶対的に矛盾するのです。並び立つことはない、と言ってよいと思います。そういう2つの基本的に矛盾する「倫理体系」を持っているのが、実は人間社会なのです。
 その基本矛盾を、まるで矛盾がないように誤魔化しているのがいまの日本です。「民営化すれば効率があがりますよ」というのは甘言です。JRの例がよく出されますが、どれだけサービスが低下したか、誰も言わないでしょう。試しに、電車の中で気分が悪くなった、と芝居を打ってみたらいかがですか。そうすれば国鉄時代との差がわかるのです。
 もちろん、民間企業にしたほうがスムーズにいく面がないとは言いません。ただ、あまり軽々しく問題を考えてはいけませんよ、ということです。郵便が民営化するということは、それがつぶれる可能性があるということです。公共サービスの不健全な社会は住みやすい社会ではありません。そもそも、アメリカの郵便って、小包みなどまともに相手に届かないシステムだったのです。
 そしていま、日本の宅配便メールでも、相手に届かないことがかなり起こっているようです。私の知人は、それ以来、宅配便メールをやめ、郵便システムを見直したと言っていました。
 そもそも、どこに、いまの日本の優れた郵便システムを「効率化」する必要があるのでしょうか。お金は有り余り、700兆円の借金だってウソなのに、なぜ民営化して「せっかく隠れていた貴重な財産」を、偽札に置き換えなければいけないのでしょうか。総理大臣や厚生省や市役所をなぜ民営化できないのか、いまこそ、もう一度、きちんと考えるべき時だと思います。

●怪しい話−−その4……2004.10.27


《米国債を売って、新潟県中越地方の復興資金にしよう!》



 私の相棒が、すばらしいアイデアを出してくれました。地震で大きな被害に遭われた新潟県中越地域の復興資金に、アメリカに拉致されている米国債を5兆円くらい引き出して使いましょう、というものです。
 テレビで観ると、山がいたるところで崩壊しています。財政赤字で日本政府や地方公共団体は非常に苦しいようなので、あの地域の復興には、いったい、どれだけの年月と資金が必要になるだろうか、そのお金はあるのだろうかと、途方にくれるのではないでしょうか。
 でも、大丈夫です。日本にはお金はたくさんあります! お金をお金(偽札まがいの存在)で持っているより、緑豊かな自然環境の中で、住民が細かく手入れを行き届かせた国土こそ、私たちの子孫に残せる財産です。日本政府は、どんどん資金を投入して、地震が終結したら全力をあげて、中越地域の国土復興に取り組むべきです。
 さて、そのお金ですが、実は日本は、政府・個人・企業が合計で、実に300兆円もの海外資産を保有しています。この数字もあまり公言されていません。とくに悩み多いのが「米国債」です。推定で200兆円はあると見られています。
 これだけ「米国債」を買ってやっているのは、1つには、日本国内で金利を稼げないからです。日本の大銀行なんか、自分の営業努力を放棄して買い漁っている、と私には映ります。だって、3%だったか4%だったかの利回りなんですから(で、日本人預金者にはppmの金利しか払っていないんですヨ)。もちろん日本政府も大量に購入していますが、ではその資金の出所は?
 財政的に苦しいのに、なぜ米国債を買えるお金があるのでしょうか? それは、米国債を購入するために新たに日本国債(せいぜい1%の利子)を発行しているからです、これホントです! そして、金利差を稼ぎ、年間予算に組み入れているのです。
 でも、この米国債ですが、アメリカは今、確かに利子を払ってくれています。ま、これは借金だから仕方なく、です。では、この米国債の元本は、返却可能なのでしょうか。「ノー」です。アメリカの財政赤字は日本並みかそれ以上だからです。ハナっから還せっこないんです。200年たっても無理です。こんなひどい国債がなんで「AAA」なんですかね。なぜか、その格付け機関が、アメリカ政府とグルだからです。
 日本の国債が「CCC」だとか何とか言われますが、ウソ言ってはいけません。日本の国債は何も外国から買って貰っているわけではないからです。いざとなれば、日本国民が負担すればすむ話で、そういうことは、ま、起こらないほど日本人は大金持ちだからです。これ以外に、国有地とか道路とか公共施設という膨大な資産を政府や地方公共団体は保有しているんですよ!
 で、まあ、このような自然災害の時ですから、政府も緊急のお金が必要です。だから、米国政府と交渉して、政府が保有する約70兆円の米国債のうち、せめて5兆円くらいを売却する、という話をつければよいのですね。
 ただ、米国政府は抵抗するでしょうねえ! 下手をするとドル不安を加速することになります。だいたいが、いまのドルの対外価値は、ほとんど日本が保証してやっているような現状だからです。でも、あえて、米国債を売却することは、たぶん世界全体にとってメリットのほうが多いと感じます。アメリカ国民にとっても、自分たちがいかにイビツな国家を作っているか、少しは実感できるのではないか、とも思うからです。
 コワイのは、かつての橋本総理大臣の苦労、またアメリカ大和証券の解散の本当の理由が、実は、この米国債を売却しようとしたことにあった、という噂があることです。ゴロツキにお金を巻き上げられる日本、という構図です。これに一矢も二矢もむくいておかないと、将来が危ういのは明白かもしれません。


●怪しい話−−その5……2004.10.28


《Newsweek世界国力ランキング》


 Newsweek日本版の2004年11月3日号の「世界国力ランキング」は、『日本の数字』で私が遠慮がちに述べたことを、かなりあからさまに書いていて、まさに我が意を得たりです。もっとも、日本の評価に関する部分については、たくさんの異論があります。ま、アメリカのユダヤ系ジャーナリズムの雑誌ですから、そのことを知っている人には、おわかりとは思いますが…。
 ま、この欄を見る人は、Newsweekを読む人よりはるかに少ないので効果は期待しませんが、なかなか勝手なことを書いています。そもそも、28-29ページの分析ですが、第5位の日本のところに「経済力で5位に甘んじたのは国の借金が大きすぎるから」と書いてあります。確かに『日本の数字』であげたように、700兆円の負債があるのですが、半分の金融資産もあるのですよ。しかも国全体で、米国債を200兆円も買い支えてやっている国(日本政府としては70兆円)に対して、このコメントは事実誤認というか、まったく失礼なものだと私は思います。
 であるのに、別の項目(30ページ)では、その膨大な赤字である米国債について触れていて、日本と中国が買い支えていることに言及しています。こりゃ何でしょうか。ついでに、この部分を書いているファーガソン(ニューヨーク大学教授)が次に、「アメリカの財政赤字は、メディケア(高齢者医療保険制度)と年金制度の大改革を行わないかぎり、今後も増え続ける公算が大きい」というにも、首をかしげてしまいます。
 というのは、確かにそうなのかもしれませんが、アメリカの年金制度や医療保険制度が他国と比べてそんなに立派なものとは思えないからです。これについては、具体的な数字を調べないといけないので断定はしませんが、社会保障制度が整備されていないアメリカが、それをさらに悪化させることができるんでしょうかね。
 あと、生活力なんかもかなりアヤシイ感じがします。よく出てくる「ビッグマックの値段」なんて、もう陳腐そのものでしょう。あいかわらずこんな指標を使っているんですから、ホントのことがわからないんだと思います。
 ただ、全体としては、ユダヤ系=民主党系=メディアの主張がクリアには出ていると思います。ただ、ここでのデータは、かなり恣意的なものも含まれていることは気をつけてください。