きちんとわかる木質バイオマス

●産業技術総合研究所 著 ●定価(本体1500円+税)  

廃棄物や間伐材から液体燃料を!



京都議定書の第1期約束期間(2008-2012)に入り、
木質バイオマスは世界的にますます注目されている。
植物を燃料にすれば、CO2排出量にカウントされないからだ。
しかし、日本が最終的にめざす道は、豊かな森を維持しながら、
その間伐材や廃棄物から液体燃料を作って利用すること、
そのための洗練された技術を開発することだ。



産業技術総合研究所 著   著者紹介
きちんとわかる木質バイオマス
  はじめに
     目次
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京都議定書の第1期約束期間(2008-2012)に入り、
木質バイオマスは世界的にますます注目されている。
植物を燃料にすれば、CO2排出量にカウントされないからだ。
しかし、日本が最終的にめざす道は、豊かな森を維持しながら、
その間伐材や廃棄物から液体燃料を作って利用すること、
そのための洗練された技術を開発することだ。


  • 四六判  並製
  • 229ページ
  • 定価(本体1500円+税)

  • ■著者紹介

    (第一部のインタビューイを含む)

    第一部
    松尾義之(まつお・よしゆき)

    第二部
    第一章、第二章
    坂西欣也(さかにし・きんや)

    第三章
    遠藤貴士(えんどう・たかし)

    第四章
    澤山茂樹(さわやま・しげき)

    第五章
    花岡寿明(はなおか・としあき)

    第六章
    村田和久(むらた・かずひさ)

    第七章
    美濃輪智朗(みのわ・ともあき)


    ■目次




    はじめに――木質バイオマスをどうとらえるか 7 第一部 木質バイオマスを開拓する ――語り手:坂西欣也、遠藤貴士 澤山茂樹、花岡寿明 村田和久、美濃輪智朗 聞き手:松尾義之(文責) 木質バイオマスを液体燃料に 22 木の本質は、ナノ構造の複合材料 36 遺伝子工学で課題の克服をめざす 48 BTLプラントを稼働させる 59 触媒は魔法の固体 67 プラントや工程を定量的に評価できる仕組み 75 第二部 木質バイオマスから液体燃料へ 第一章 なぜ木質バイオマスなのか 85 木質バイオマスとは/バイオマス・ニッポン総合戦略 二〇〇七年は日本のバイオエタノール元年 木質バイオマスの役割を位置づける バイオマス由来の液体燃料/硫酸法から酵素糖化法へ BTLプロセス/バイオエタノール実用化プロジェクト 第二章 木質バイオマス実用化へ向けて 95 産総研でなぜ木質バイオマス研究を展開するのか 産総研独自の発酵リアクター/BTLプロセス 全バイオマスの利用/期待が高まる木質バイオマス 第三章 メカノケミカルと水熱処理 103 木質バイオマスの研究/身の回りの木材由来製品/木材成分の特徴 セルロースの特徴/生体内の基本はミクロフィブリル 木はとても丈夫なナノ構造体/糖化方法のいろいろ 酵素糖化のための前処理技術/古典的な前処理技術の検証 セルラーゼとセルロースの反応/酵素糖化しやすいセルロース ナノ繊維を取り出す/石臼を使う/湿式メカノケミカル処理の効率化 微細繊維(ナノファイバー)の応用展開/今後の見通し 第四章 酵素糖化とエタノール発酵 131 木質バイオマスから単糖を作る/酵素糖化技術 糸状菌アクレモニウム/セルラーゼかヘミセルラーゼか? エタノール発酵技術/実用酵母の遺伝子操作 酵母のライフサイクルを使う/濃縮と発酵液の処理 今後の課題 第五章 BTL液体燃料製造プロセスと乾式ガス精製法技術 153 軽油の課題/BTLプロセスとガス精製の意義 ポイントはガス精製法/乾式ガス精製法 活性炭を用いた脱タール/実験装置と実験条件 破過挙動/活性炭粒子径の影響/比表面積の影響 平均細孔径の影響/物性についてわかったこと 活性炭を用いた脱硫/チャーの利用/チャーを用いた脱硫 七七Kでの微細構造の測定/活性炭Aとチャーの脱硫効果比較 鉄を担持させたときの活性炭Aとチャーの脱硫効果比較 ラボスケールにおける乾式ガス精製工程を含んだBTLプロセス開発 ラボスケールのDME合成実験/[O2] /[C] の影響 ガス化温度/今後の展開 第六章 FT合成触媒の開発とFTディーゼル合成法 179 BTL技術の特徴/FT反応 反応方法と使用触媒の関係/BTLに求められるFT技術とは? コーレン社の動向/バイオガスの改質触媒の開発 Re修飾 NiSr/ZrO2 触媒による改質/脱硫触媒 Ru-Mn/g-Al2O3 系FT触媒/バイオガスによるFT反応 ルテニウム/カーボンナノチューブ系触媒 水素化分解/実用化のイメージ 第七章 経済性・環境性・社会性の評価技術 205 さまざまな疑問に答えるための評価技術/プロセス評価の流れ 既存バイオマス変換プロセスの評価 プロセス設計からの展開――環境性(LCA)評価に向けて プロセス設計からの展開――社会性評価に向けて 評価の限界と注意点/結果を冷静に取り扱うこと 著者紹介 223 参考文献 229


    まえがき



    はじめに――木質バイオマスをどうとらえるか


    京都議定書の第一期約束期間(二〇〇八〜二〇一二年)

     バイオマスへの世界的関心がますます高まっている。地球温暖化防止のための国際
    的な取り決め――京都議定書の第一期約束期間(二〇〇八〜二〇一二年)に入った
    からである。少なくとも二〇〇七年の地球の平均気温が下がった(寒冷化した)の
    はほぼ確実と言われ、またアメリカの金融破綻による世界不況から、おそらく、
    二〇〇八年、二〇〇九年の世界のエネルギー消費量が大幅に減少するのは確実であ
    る。その結果としてCO2 排出量もまた、大きく減少するに違いない。
     しかし、そんなことは、京都議定書にとっては何の関係もない。地球温暖化(論争)の
    ポイントは、科学でも技術でも論理の正当性の問題でもなく、あくまでも「政治
    外交上の約束事である」ということだ。だから、IPCC(気候変動に関する政府
    間パネル)にノーベル「平和賞」が贈られたのであって、本質は科学技術の問題で
    はない。たとえCO2 温暖化仮説が誤りであることが科学的に証明されようとも、
    京都議定書は有効であり、それを守れないときは取り決め通りのペナルティー
    (三〇%上乗せした次期削減量)が課せられる。
     まず現実をはっきりと認識しておく必要がある。最新のデータである二〇〇七年の環境
    省速報値によれば、九〇年基準に対して、日本の目標はマイナス六%なのに、プラ
    ス八・七%という絶望的な現実にある、ということだ。
     日本社会がCO2 削減に消極的だというわけではもちろんない。環境省速報にもあるよう
    に、原子力発電所の停止(東京電力柏崎刈羽発電所)が痛かった。しかし、地震と
    いう天災であっても許さないのが国際条約だ。環境省によれば、これが稼働してい
    れば、少なくとも二〇〇六年に対して一%弱は減少していたという。国民や産業界
    の努力は確実に実を結びつつある。新潟県中越沖地震(二〇〇七年七月一六日)が
    その努力を隠してしまっただけだ。

    省エネ先進国・日本

     もちろん私たち人類が「持続可能」なかたちで生きていくこと、そうした仕組みを地球
    上で現実のものとすることは、特に未来世代にとって生存の必須条件である。アメ
    リカや中国は参加しなかったとはいえ、その第一歩としての京都議定書には、きわ
    めて重要な意義がある。
     ただし、事実として認識しておくべきポイントがいくつかある。まず、「CO2 排出量」
    とは本当にカッコつきで理解しなければいけないということだ。この排出量は、現
    実にCO2 を出している量ではない。木材でも草でも廃棄物でも、ともかく植物を燃
    やして出てくるCO2 はカウントされない排出量なのだ。だからスウェーデンなど人
    口当たりの森林面積の広い国では(人口は八〇〇万人)、環境税などとリンクさせ
    て、木材チップを燃やして暖房する政策をとった。一人当たりで日本よりも三〇%
    も多くエネルギーを消費していながら、なお国民一人当たりのGDPは日本より低
    いという厳しい状況にある。それでも「地球環境先進国」とされるのは、要するに
    薪を燃やすことにしたからである(スウェーデンの電力の大半は、原子力と水力で
    供給されている)。
     政治外交上の攻防があった末の合意であったが、京都議定書の枠組みの中では、そもそ
    も、「CO2 排出量」を九〇年基準にしたところで、すでに日本には大きなゲタがはかされていた。
     図0・1【書籍を参照】を見れば一目瞭然だが、一人当たりGDPでは、日本がアメリカをや
    や超え、ヨーロッパは日本の四分の三でしかない。GDPと最も密接な関係を持つ
    とされる一次エネルギー消費量は、アメリカは論外としても、日本とヨーロッパは
    ほぼ同じだ。
     これは何を物語っているのだろうか。要するに、ヨーロッパはいまでも日本より約三〇
    %も無駄にエネルギーを使っている、ということである。にもかかわらず日本のほ
    うが「CO2 排出量」が多いのは、フランスの電力(原子力発電が八〇%)とバイオ
    マス利用が効いているからと推測される。
     ヨーロッパ社会のエネルギー利用効率の悪さは、図0・2【書籍を参照】からも見て取
    れる。これは一人当たりでなく総量から求めた比較値だが、一次エネルギー当たり
    のGDPはさらに低レベルであり、また、カッコつきの「CO2 排出量」であっても、
    GDP当たりの数字は、日本を大きく上回っている。ここにもう一度、わざと図0・
    1と同じ一人当たりの「CO2 排出量」を入れておいた。日本がヨーロッパに対して
    頭ひとつ抜けて悪いことがわかる。
     これは、日本人が働きすぎ(あるいは儲けなさすぎ)なのが真の理由なのかもしれない
    (中国をグラフに入れなかったのは、効率の悪さがケタ違いで比較にならないからである)。

    世界の経済成長は止まらない

     地球温暖化という課題があるにもかかわらず、実は、人類の経済成長は飛躍的に拡大し
    ている。それは世界の一次エネルギー消費量を見れば歴然としている(図0・3)
    【書籍を参照】。九〇年比で二五%も増えているのだ。実質GDPでは実に五〇%、
    名目GDPなら一〇〇%増である。対する日本のGDPは九〇年から二〇%増で、
    一次エネルギー消費量の増加は一九・三%である(アメリカの金融バブル期のデー
    タも入っているので要注意。二〇〇八年以降も含めた議論は改めて必要になる)。
     ただ幸いなことに、日本は人口が減少に転じたため、京都議定書の約束については少し
    楽になってきたという見解も登場している。それはともかく、「CO2 排出量」の削
    減に真面目に取り組むつもりなら、(1)電力排出原単位を下げる原子力発電や水力発
    電やバイオマス利用を進めること、(2)省エネ機器を導入するために優遇策などを講
    じること(まずは、全国の小中高校・大学・市役所・公共施設などの全設備を最新
    の省エネ機器に置き換えることなど)、そして、(3)企業活動も含めてあらゆる社会
    活動を低下させることが求められている、としか言いようがない。
     二〇〇八年秋からの不況で、(3)がどれほど下がるか注目される。あるいは予想外の風
    が吹くかもしれないが、そこには失業者の増加という負荷がかかる。それにいかに
    対処するか。(2)については、排出権取引で失うであろう国家の損失に見合うのであ
    れば、やった方が得策だ。
     (1)はなかなか皮肉だ。おそらく「CO2 排出量」に最も効果的なのがこの対策なのだが、
    いわゆる環境保護派と言われる人々は、なぜか、バイオマス以外はお好きでない。
    しかし、鉱物資源もエネルギー資源も皆無に近く、食料自給率でさえ四〇%(カロ
    リーベース。問題ある数字ではあるが)の日本が、今日の繁栄をある程度犠牲にす
    るのは仕方ないとしても、まさか生存の根幹(生命線)であるエネルギー、食料、
    そして最大の「売り」である科学技術(ノウハウやソフトウェア)まで放棄する選
    択肢はありえない。

    省エネ革新技術は、大半が日本生まれ

     京都議定書の第一期約束期間の到来は、日本でなされてきた「素朴すぎる議論」への決
    別を迫っているように見えないだろうか。当面は排出権取引で済ます(五年分で数
    兆円程度の支払い)としても、このままでは、次のステップでは、先のアメリカ同
    様、国際的な枠組みからの離脱さえ考えなくてはいけなくなるかもしれない。
     しかし日本は、この一〇〜一五年の間に驚くべき成果(貢献)を成し遂げた。プリウス、
    省エネ家電、エコキュート(ヒートポンプ)、液晶テレビ、発光ダイオード、太陽
    電池、超高効率石炭火力発電……。いずれも、それまでと同等の機器のエネルギー
    消費を大きく減らす、まさに画期的な技術革新だ。それらがすべて、日本から生ま
    れ育っていることに気がつくべきである。
     もちろん、日本ではさまざまな地球温暖化対策も実行されている。それでもなお、多く
    の人々が本当の本気になれないのは、あるいはそこに、真の科学性・合理性がある
    とは言い切れない面があるからではないだろうか。京都議定書への反対論が出てく
    るのも仕方ない面がある。
     大多数の日本人.が本気で考える根本的な解決の道は、科学技術による方法であろう。
    これは、省エネ技術の世界のリーダーとして、たとえ他に追従できる国がなくても、
    信じて進み続けるしかない。そしてその一方で、好むと好まざるとにかかわらず、
    京都議定書を守るべく努力を重ねていかねばならない。それが国際社会にすむ人々
    に約束したことだからだ。

    もっともっと注目すべきバイオマス

     おそらく多くの日本人は、「薪を燃やすことが本当に地球のために優しいのか」という
    根本的な疑問を持っていると思われる。森を育ててきた歴史は、手入れ文化を生み、
    間伐材などを上手に使うのは当たり前のことと捉えてきた(現在実行できていない
    のが問題だが)。禿げ山を作ってはいけない、と。
     記憶に新しいが、てっとり早いバイオマス利用の暴走は、二〇〇八年夏以降のアメリカ
    のバイオエタノール産業に端的に現れた。実態は石油の先物投機だったが、バイオ
    マスが食物と深く結びついていることを、世界の人々に実感させた意義は大きい。
    ブラジルのサトウキビからのエタノールも、話は単純ではないが、要するにカロリ
    ー源となる糖分をエネルギー化している点では変わりない。
     しかし、少なくとも、食料ではない木材、つまり木質バイオマスからの液体燃料につい
    ては、積極的に研究開発を進める価値がある。これが世界の共通理解だ。ヨーロッ
    パでは、ドイツが木材からの大規模な液体燃料製造計画を進めているという。その
    原料は、先のスウェーデンなど北欧諸国からの木材だ(北欧には無限の木材資源が
    あるのだろうか)。
     もちろん日本人が納得できるのは、こんな大胆な方法ではない。日本には農林水産省が
    中心となって進められている「バイオマス・ニッポン総合戦略」というものがある
    (二〇〇六年三月三一日閣議決定)。そこで描かれている未来像は、ちょっと前ま
    での日本が大事に森と共生してきた姿に他ならない。バイオマス利用を農山村や漁
    村の活性化につなげようという戦略も正しい。何より、森の手入れは、水資源の確
    保という点でも次の世代に残すべき財産である。美しい森と水はかけがえのない財
    産であり、この総合戦略は日本人の肌感覚にフィットしており、さらに強力に展開
    されることを願わずにはいられない。

    それでもなお、直ちにバイオマス利用を

     「バイオマス・ニッポン総合戦略」を着実に進める一方で、京都議定書の約束期間に入
    ったいま、あるいはもっと積極的に緊急事態的にバイオマス利用を進めるべきかも
    しれない。最初に述べたように、例えば石油や石炭の代わりに一本の木を切って燃
    やしてやれば、その値がそのままCO2 削減量にカウントされる。しかも、その後に
    植林すれば、またそのぶん、CO2 吸収量にカウントできるので、二重のCO2 削減効
    果があるからだ。変なようだが、国際条約ではそうなっているのだから仕方ない。
     では日本には、いったいどれくらいの利用可能な、つまり現在はまだ未使用のバイオマ
    スが存在するのだろうか。「バイオマス・ニッポン総合戦略」によると、原油換算
    (単位は一万キロリットル)で、廃棄系が三二八〇、未利用が六六〇、将来の資源
    作物六二〇で、合計で約四六〇〇万キロリットルあるという。
     ただし、これでも、現在の日本の一次エネルギー消費量のわずか八〜一〇%でしかない。
    バイオマスへの期待は高いが、すべてを利用できても、せいぜいがこの程度なので
    ある。ところがである。これだけのバイオマスが担うCO2 排出量は、炭素換算で約
    三〇〇〇万トンある。単純に全部燃やして代替エネルギー源として利用するだけで、
    この分が全CO2 排出量から消えてなくなるのだ。

    バイオマス利用によるCO2 削減のウエイト

     日本の一九九〇年の二酸化炭素排出量は、同じく炭素換算で二億八八九〇万トンである。
    これから六%削減するのが目標だから、二億七一六〇万トンにしなければならない。
    二〇〇五年には、これが逆に約一三・四%増えて三億二七五〇万トンになっている。
    この数字が、目標値より五五九〇万トンも多くなっていて、これを減らすのが約束
    の実数なのだ(CO2 換算値になおせば、年間約二億トンである)。
     先にあげた利用可能なバイオマスによるCO2 削減量は約三〇〇〇万トンであった。不確
    かさの大きい数字ではあるが、半分以上がこのバイオマス利用で消えてくれるわけ
    である。
     目標値との差を排出権取引でまかなうとすれば(仮に二〇〇五年のデータとすると)、
    取引価格がCO2 一トン当たり一三〇〇円なので(二〇〇九年三月時点)、年間約二
    六〇〇億円の出費という概算になる。五年分で一兆三〇〇〇億円である。
     炭素換算でいえば一〇〇〇万トン当たり四六五億円ということだ。逆に計算すれば、約
    三〇〇〇万トンのバイオマス利用促進には、約一四〇〇億円の税金を注ぎ込んでト
    ントンになる(金融バブル崩壊の前は、この数字は約七〇〇〇億円だった)。森林
    整備や水資源の涵養という副産物もあるので、予算見積は細かく立てなければなら
    ないが、ざっとした数字でも、バイオマスの利用には合理性と可能性があるように
    見える。
     まずは、暖房用ストーブで石油や石炭の代わりに燃やすこと、あるいは炭を作って石炭
    と一緒に工場で燃やすだけでもいいのではないか。こういうのが日本人の感覚に合
    わないのはよくわかるが、そもそも京都議定書の温暖化対策は政治外交の問題なの
    だから、そこは我慢して、一方で省エネ機器の開発などの努力を続ける一方で、バ
    イオマス利用を急いで進めるのが得策だと思われる。

    科学技術を活かした真の解決策をめざして

     本書で紹介される研究内容は、もちろん、このような単純に薪を燃やすようなローテク
    の話ではない。現在、産総研バイオマス研究センターで開発が進められている最新
    の研究内容が中心であり、食料と競合せずにエネルギー、特に石油製品に代わる液
    体燃料を合成する技術開発の話である。
     自動車の台数は日本だけで七五〇〇万台、全世界では一〇億台に迫っていると言われる。
    この膨大な数を考えれば(もちろん自動車だけではないが)、バイオマスによる液
    体燃料が必要とされている理由は説明不要であろう。
     バイオマス研究センターでは、大きく分けると、二つの液体燃料化テーマと取り組んで
    きている。
     一つは、木質バイオマスをガス化して、そこから触媒反応(フィッシャー・トロプシュ
    反応)でディーゼル油を作り出す「BTL(Biomass To Liquid)トータルシステム」
    である。これについては二〇〇七年三月にベンチプラントが完成しており(一日当
    たり一六リットル生産)、現在、さまざまな技術開発や研究が進められている(な
    おこの方式では、ドイツのコーレン社が一日約二五〇トンを製造するプラントをす
    でに実用化させている)。
     そしてもう一つが、木質バイオマスから微生物によってエタノールを生産するシステム
    の技術開発である。これは硫酸を使う従来方式とは別の意欲的な方法であり、成果
    が注目されている。木材を粉砕したあと、セルロースやキシロースを微生物で分解
    して糖(グルコース)を作り、それをさらに微生物発酵してエタノールを作るとい
    うものだ。こちらの方式についても、二〇〇九年二月、バイオマス研究センターが
    独自に開発したベンチプラントが完成し、本格稼働を始めた。
     木質バイオマスの研究は、技術的課題の解決はもちろんだが、そこには常に経済性、製
    造のためのコストという課題がつきまとっている。バイオマス研究センターでは、
    この課題を克服するため、「評価のためのツール」についても、すでにシステムを
    開発している。その成果がベンチプラントや研究開発に活かされていることはいう
    までもない。
     ただし、単純燃焼の際に述べたように、「バイオマスはCO2 のカウント外」という現実
    に立つならば、製造コストが少々高くなっても十分に見合う可能性がある。個々の
    プラントの経済性を評価することはもちろん必須だが、木質バイオマスは、単純な
    経済性では計りきれないさまざまな副次的な効果を持っている。そうしたプラスア
    ルファをきちんと算入して、現実的なコスト計算をすべきであろう。  さまざまな要素を加味すると、「まずは実用化し、そこから改良を加えていく」という
    日本が得意とする開発プロセスを展開することは、きわめて合理的・現実的と考え
    られる。そしてそれが、おそらくは課題解決への一番の近道であろう。
                                       著者
    二〇〇九年三月



     




















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