日本の数字――データが語るこの国のゆたかさ

●松尾義之著 ●定価(本体1000円+税)  

えっ、ウソだろ! 日本人が知らないニッポンの実力。


世界のお金の何%を持っている? 海外資産は何兆円?
特許の数は世界で何位? 軍事費や兵力は?
CO2排出量は多いのか? 森林面積は国土の何%?


松尾義之著   著者紹介
日本の数字   まえがき
     目次
     あとがき
     Amazon

えっ、ウソだろ! 日本人が知らないニッポンの実力。
世界のお金の何%を持っている? 海外資産は何兆円?
特許の数は世界で何位? 軍事費や兵力は?
CO2排出量は多いのか? 森林面積は国土の何%?


  • 四六判  並製
  • 202ページ
  • 定価(本体1000円+税)

  • ■著者紹介

    著者 著者紹介 松尾義之(まつお・よしゆき)
    白日社編集長、科学ジャーナリスト。東京農工大学非常勤講師(担当:技術者倫理)。
    一九五一年東京生まれ。七五年、東京農工大大学工学部応用物理学科を卒業し、
    日本経済新聞社に入社、日経サイエンス編集部に配属。九五年科学出版部次長
    (日経サイエンス副編集長)。八五年から一一年間(約五五〇回)、TV東京系列の
    科学技術番組「シンクタンク」のキャスターも務めた。
    九八年日本経済新聞社出版局編集委員。二〇〇〇年八月に円満退社し、
    二〇〇一年八月より現職。「日経サイエンス」に多数の科学技術解説を書いているほかに
    (単著は六編)、『日曜日のサイエンス読本』(共著)などがある。


    ■目次




    『日本の数字』目次

    はじめに……………………………………………………………………… 15


    第一章 お金 19

    個人金融資産 世界には全部でいくらお金があって、
    そのうち日本人はいくら持っていますか。……………………………………………………… 20

    金融資産の流れ 総額一四〇〇兆円という日本のお金(個人金融資産)は、
    最終的にどこに流れていきますか。………………………………………………………………… 22

    個人資産 日本の個人が最も多くお金を委託しているのはどこですか。…………………………… 24

    金融機関 日本の銀行(金融機関)には、全部でいくらのお金が集まっていますか。……………… 26

    株式・債券 日本の株式市場、債券市場の時価総額は?…………………………………………………… 28

    企業・法人 日本の企業や法人は、全部でいくらのお金を集めていますか?……………………… 30

    政府 国や都道府県や市町村の借金は、全部合わせるといくらですか。…………………… 32
    海外資産 外国にある日本の財産は、全部でいくらですか。…………………………………………… 34

    [世界の金持ち]………………………………… 36



    第二章 経済活動 37

    国内総生産 人間が働いて作りだす生産物やサービス(GDPの総額)は、世界全体では
    いくらですか。そのうち、日本はどれだけ占めていますか。…………………………… 38

    GDP/人口 一人当たりのGDPは、日本とアメリカでどっちが多いですか。……………………… 40

    世界貿易 全世界で、いったいどれだけの貿易が行われていますか。………………………………… 42

    米国への投資 毎年アメリカに国外から投資されている金額は?………………………………………… 44

    外貨準備 国が対外支払いに充当するために保有している外貨(外貨準備高)を、
    日本はいくら持っていますか。………………………………………………………………………… 46
    ODA 日本は政府開発援助(ODA)を毎年いくら出していますか。…………………………… 48

    [アメリカの経済援助]……………………… 50



    第三章  地球環境 51

    森林面積 陸地の何%が森林のままですか。日本では何%が森林ですか。
    世界一広い森を持つ国はどこですか。…………………………………………………………… 52

    農業用地 農業に利用されている土地は、地球上の陸地の何%ですか。
    世界一広い農地を持つ国は?
    農地のパーセントが日本に最も近い国は?…………………………………………………… 54

    農地と森林 日本人は、一人当たりどれくらいの農地を持っていますか。
    また、一人当たりどれくらいの森林を持っていますか。…………………………………… 56

    年間降雨量 日本の年間降雨量は、世界平均のどのくらい?……………………………………………… 58
    二酸化炭素 二酸化炭素排出量が最も多い国はどこ?……………………………………………………… 60

    二酸化炭素割合 一人当たりの二酸化炭素排出量が最も多い国は?
    GDPに対する二酸化炭素排出量が最も多い国は?……………………………………… 62

    ごみ 世界一ごみを多く出している国は?
    一人当たり最も多くのごみを出している国は?…………………………………………… 64


    第四章  食料 67

    食料生産量 地球上では、どれだけの食料が生産されていますか? 
    日本の食料は十分にありますか?………………………………………………………………… 68

    穀類の種類 大事な穀物のうち、最も多く生産されているものは?…………………………………… 70

    穀類生産量 世界中のすべての人が、毎日一人当たり食べられるはずの穀類の量は?………… 72

    いも類生産量 いも類のうちで最も多く生産されているものは?………………………………………… 74
    豆類生産量 世界中のすべての人が、毎日一人当たり食べられるはずの豆類の量は?……… 76

    野菜生産量 世界中のすべての人が、毎日一人当たり食べられるはずの野菜の量は?……… 78

    果実生産量 世界中のすべての人が、毎日一人当たり食べられるはずの果実の量は?……… 80

    肉類生産量 世界中のすべての人が、毎日一人当たり食べられるはずの肉の量は?………… 82

    ミルク生産量 ミルクは何ミリリットル飲める計算になりますか。………………………………………… 84

    鶏卵生産量 世界の人々は、鶏卵を何個食べられますか。………………………………………………… 86

    [水産物の生産量]…………………………… 88


    第五章  エネルギーと運輸 89

    エネルギー消費量 人類は毎年、どれだけのエネルギーを消費していますか。
    日本はどうですか。………………………………………………………………………………………… 90
    原油の消費量 アメリカは世界の原油の何%を使っていますか。…………………………………………… 92

    エネルギー輸出入 ドイツやイギリスと比べて、日本の一人当たりのエネルギー消費量は、
    多いか少ないかどっちですか。………………………………………………………………………… 94

    石炭と天然ガス 石炭をいちばん使っている国は? 天然ガスをいちばん使っている国は?……………… 96

    電力消費 日本の電力消費量は、世界の第何位ですか。……………………………………………………98

    乗用車の台数 日本には乗用車が何台ありますか?(人口は一億二八〇〇万人)……………………………100

    乗用車の占有 日本の全保有自動車を国中に並べると、一キロ四方に何台並ぶ?
    全乗用車を全国の道路に均等に並べると、一キロメートルに何台並ぶ?………… 102

    航空貨物輸送 航空貨物輸送量(国内線+国際線)がアメリカに次いで多い国は?……………………… 104

    航空旅客輸送 旅客輸送量を一人当たりに換算したとき、日本より少ない国は?………………… 106

    鉄道旅客輸送 一人当たり最も多く鉄道を利用している国は?
    日本人は一年間に東京・新大阪間を何回往復している?……………………………… 108
    観光客数 日本にやって来る外国人は、国際的に見て多いか少ないか、どっち?……………… 110




    第六章  工業・技術・国防 113

    製造業 日本の製造業は強いと言われますが、製品の額から原料費や税金を引いた
    総額(付加価値額)は、年間どれくらいですか。…………………………………………………… 114

    研究費と研究者数 研究開発費と研究者数をアメリカと比較すると。 ……………………………………………116

    研究者の人口比 GDPに対して研究開発費がいちばん多い国は?
    人口に占める研究開発者の数がいちばん多い国は?……………………………………… 118

    特許と技術貿易 特許が世界で最も多く出願されている国は?
    技術貿易で輸出額が最も多い国は?……………………………………………………………… 120

    国防費 アメリカの国防予算は、世界全体のどのくらいを占めるか。
    日本の国防費はGDPの一%。世界と比較すると多いか少ないか。………………… 122
    兵員の数 日本の兵員二四万人は、欧州諸国と比べて多いか少ないか。
    人口に占める兵員数は、日本は多いか少ないか。
    人口に占める兵員数が最も多い国はどこ?…………………………………………………… 124

    [一人当たりの国防予算]…………………… 126



    第七章  工業生産 127

    銑鉄・粗鋼 最も多くの鉄(銑鉄、粗鋼)を生産している国は?…………………………………………… 128

    ナフサ、セメント ナフサ(石油化学工業の原料)を最も多く生産している国は?
    セメントをいちばん多く生産している国は?………………………………………………… 130

    ゴム、タイヤ 合成ゴムおよび自動車タイヤをいちばん生産している国は?………………………… 132

    冷蔵庫 家庭用冷蔵庫を最も多く生産している二つの国は?……………………………………… 134

    テレビ テレビを一番多く生産している国は? 
    その国は、世界の何%を生産しているか。……………………………………………………… 136

    電話機 電話機(携帯電話を含む)を最も多く生産している国は?
    アジアで生産されている電話機は、世界の何%?………………………………………… 138

    カメラ カメラを最も多く生産している国は?…………………………………………………………… 140

    乗用車 乗用車を最も多く生産している国は?………………………………………………………… 142

    トラック、バス トラックをいちばん生産している国は?
    バスをいちばん多く生産している国は?………………………………………………………… 144



    第八章  日常生活 147

    国土面積 日本の国土(三八万平方キロ)は、ドイツと比べると大きいか小さいか。…………………… 148

    人口 人口一億二八〇〇万人は、ドイツの何倍か。
    関東地方の総人口と韓国を比べると、どっちが多い?…………………………………… 150

    就業者数 どの国も、職業に就いている人は、人口のだいたい何分の一?………………………… 152

    道路延長距離 日本の道路(総延長距離)は、地球の何周分あるか。
    日本の道路はドイツの何倍あるか。………………………………………………………………… 154 

    教育費 学生一人にかける教育費が最も高い国は?…………………………………………………… 156

    交通事故 アメリカの交通事故死亡者は年間何万人?…………………………………………………… 158

    [日本の自殺死は多くない]………………… 159

    住宅保有 人口当たりで最も多くの住宅を持っているのは?…………………………………………… 160

    新聞発行部数 新聞の発行部数が最も多い国は?………………………………………………………………… 162

    公共図書館 公共図書館がいちばん多い国は?………………………………………………………………… 164
    新刊図書発行 新しい本を最も多くの種類発行している国は?…………………………………………… 166

    テレビ保有台数 一人当たりのテレビ保有台数がいちばん多い国は?……………………………………… 168

    映画鑑賞機会 アメリカ人は年に何回映画館に足を運んでいるか。………………………………………… 170

    電話の保有 一人当たり、最も多くの電話を所有している国は?……………………………………… 172

    パソコン普及 一人当たりのパソコン保有台数がいちばん多いのは?……………………………………… 174

    [人間開発指数]………………………………… 176



    第九章  社会福祉 177

    社会保障費 日本の社会保障関係費をアメリカと比べると。……………………………………………… 178

    医療費 日本人一人当たりの医療費は、アメリカより多いか少ないか。……………………… 180
    医師の数 人口一〇〇〇人当たりの医師の数が最も多い国は?……………………………………… 182

    病院ベッド数 病院のベッド数(人口比)がいちばん多い国は?………………………………………………… 184

    平均寿命 平均寿命が最も長い国は?…………………………………………………………………………… 186



    基本データの試算・推定値
    太陽はどれだけのエネルギーを出していて、地球はどれだけを受けているか。 188
    地球の海の役割と、その炭素収支は? 190
    地球には何種類の生物がいるか。何種類の民族・言語があるか。 192



    主な参考文献&資料……………………………………………………… 195
    あとがき…………………………………………………………………… 197 






    ■はじめに



     新聞やテレビによれば、日本は今、大きな問題を抱えて泥沼にはまりこんでいるよ うに見えます。金融機関のバブル後遺症、不良債権処理が未曾有の負荷を日本社会に 課したことは間違いありません。それに伴って生じた不況は長引き、回復のきざしは 見えてきたものの、日本社会にいろいろな歪みを生みました。一方で、高齢化社会は ますます進み、社会保障支出は増え、年金の運用もままならず、赤字国債は増え続け ています。どうも暗いことばかりのようです。しかし、ほんとうにそうなのでしょうか。
     不況不況と言われながらも、この一〇年、相変わらず我が国のGDPは五〇〇兆円 を維持し、とくに製造業の頑張りはめざましく、膨大な利益と金融資産を増やし続け ています。トヨタが典型的な例ですが、トヨタだけではありません。世界市場で一人 勝ちの企業がいくつもあります。いったい、この国は全体としてどうなっているので しょうか。
     本書は、私たちが住む「ニッポン」の実体を、掛け値なしにできるだけ明確に浮か び上がらせたい、という思いから生まれました。使ったものは、公開されている統計 データだけです。でも、それらが語りかけている内容をクリアにさせるだけで、実は かなりのことがわかってくるのです。「日本の実体とは?」という素朴な疑問を私た ちが実際に探っていったプロセスを一冊の本にしたものが本書です。

    データの採用と加工
     大きな全体を知るためには、膨大な情報の中から、その多くを削除してしまうこと がポイントです。例えば統計表にはたくさんの国のデータが記載されていますが、本 書では、原則的にG7(アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、 カナダ)と、隣国であるロシア、中国、韓国の計一〇カ国に絞りました。まずはそれ だけで十分。必要に応じて、他の国のデータを追加するという方針を取りました。
     その年のデータがなければ前年の数字を躊躇せずに採用しました。それほど大きな 違いはないと推定できるからで、ないよりあったほうがはるかに実態がわかるからで す。さらに、採用するデータもできるだけ絞り込みました。「多いほうがいい」とい う常識に、あえて逆らいました。少ないからわかる、という面を強調したいと思います。
     また、数字をできるだけ実感できるような形に加工しました。国民一人当たり、あ るいはGDPと比較して、という形にすれば、何百兆円という理解不可能な数字が、 何百万円という実感できる数字に変わってきます。ここでも、求めたのは実感に近い データでした。
     いろいろな発見もありました。日本の製造業がいかに強力であるかを示すデータも ころがっていました。それを支えるデータも、一部の人々にはよく知られていたよう ですが、それらも本書に採用しました。路傍に落ちていても拾わなければ意味をなし ませんし、私たちの知識にはなりません。つくづくそう思ったものです。

    議論の前提は、基本データ
     意外な事実もたくさんありました。例えば、日本の社会保障費がどのくらいかけら れているのか、ご存知ですか。政府の負債(国債+借入金)の六〇〇兆円ばかりがや り玉にあがりますが、では資産がどれだけあるかご存知ですか? マスコミ論調、政 治的プロパガンダ、社会通念とされている内容と、実態との間にかなりの乖離が見ら れることもわかりました。
     このような作業の末に私たちに垣間見えてきたのは、もちろん異論はあるかもしれ ませんが、「世界一裕福で、おそらく世界一うまくやっている国、それが日本ではな いか」という結論です。こう変えていけば世界の人々からさらに尊敬されるであろう、 という方向もおのずと見えてきます。その一方で、せっかくうまくやってきたのに、 それをまずい方向に転換しようとしているのではないか、という面も感じられます。 改革は、改善と改悪という二つの選択肢を選ぶことでもあります。さらに、外国から の不当な内政干渉には毅然とした態度をとらなくてはいけません。

     当たり前ですが、ここに収録したデータだけで世界の中の日本が全部見えるわけで はありません。欲しいと思って探しても、見つからなかったデータはいくつもありま すが、それでも最小限必要なデータは、そろっていると確信します。このような動か しがたいデータをまずは基本にして、その上で、私たちはこの日本をどのように動か して行くべきか、どんな国にしていくべきか、議論すべきだと思います。事実と異な る前提に立っていては、政治、経済、金融、産業、教育、科学技術、社会福祉など、 いずれをとっても不毛のものしか生み出さないと信じます。

     どうか、事実を受け入れ、まずはそれを楽しんでいただければと思います。

    松尾義之(白日社編集長)
    二〇〇四年八月


    あとがき



     たったこれだけのデータをながめて見ても、日本という国がいかにユニークな存在 であるか、また世界の中で大きな存在であるかがよくわかります。  統計データに初めて関心を持ったのはもう一五年以上も前のことです。きっかけは 科学ジャーナリストとして、いったい日本の基礎研究や開発研究は世界の中でどのよ うな位置にあるかを知りたかったことです。研究開発費および研究者数を先進諸国と 比べ、日本がいかにたくさんのお金と人材を科学技術開発につぎこんでいるかを知り、 「このくにの戦略」がわかった気がしました。  しかしもっと大きな発見は、これらのデータと国防費や兵力と比較したときです。 現在のデータはかなり変わっていますが、その当時、「国防費+科学技術開発費」と いう数字を作ってやると、そのGDP比は先進諸国でほとんど同じだったのです。も ちろん冷戦の時代でしたが、要するに欧米先進諸国は、国防費に大きなウエイトを置 かざるをえませんでしたが、日本は、国防費や兵員にさくべき資産を科学技術開発に 回すことができたのです。そのことがよく見えました。  一人当たりGDPはアメリカの一・五倍以上ありました。平和国家ゆえのメリット を最大限に活かし、日本は世界で最も繁栄する国家を作り上げたのです。妄想だと叱 られるかもしれませんが、平和主義でやってきた日本の繁栄こそが、冷戦構造を根底 から崩壊させた要因であったと思いますし、ヨーロッパがEUという共同市場を作ら ざるをえなかった理由でもあると、私はいまでも思っています。破壊しか生まない軍 事費、簡単には消費できないモノに投資するのがいかに非効率か、世界の人々が気が ついたのだと思います。  この仮説の妥当性は、以後の統計データが如実に語っていると思います。その後、 日本ではバブル経済の破綻が起こり、日本はその解決に全力を傾注せざるをえません でした。しかしそれは、驕りを排せという教訓かもしれません。 バックミンスター・フラーの思想  実は、三年前に編集者として別の企画を進めていました。「宇宙船地球号」という 言葉は誰もが知っていますが、では、誰が最初にこの言葉を提起したのかご存知でし ょうか。一部で言われている経済学者ではありません。建築家であり哲学者であり、 また優れた思想家でもあったバックミンスター・フラーなのです。『地球が一〇〇人 の村だったら』という本が話題になりましたが、ネットで普及したとされるあの考え 方のおおもとは、実はフラーの思想です。しかし、それはかなり歪められているよう にも思います。  フラーは、エネルギー、食料、水、生物など、宇宙船地球号を運行するために必要 なデータをたくさん集めました。彼が求めたのは、今の日本人の多くが漠然と抱いて いる「宇宙船地球号」という情緒的なものではなく、彼の著書の題名ずばりの『宇宙 船地球号の操縦マニュアル』という、まさに緊急を要する具体的な方策でした。  いうまでもなく、私たちはたくさんの仲間を抱えながら宇宙を一緒に旅する「宇宙 人」であり、その宇宙船の名前が「地球」です。この宇宙船には、必要なものはすべ てそろっているのに「きちんと運転操作するマニュアル」だけがまだないのです。そ の地球号の全体像を明らかにしたいと思いましたが、残念ながらその企画は最終的に は実現させることができませんでした。  この本には、その時の考え方や集めたデータが一部含まれています。しかし、基本 的な思想は異なります。あくまでも、世界の中の日本という大きな存在をデータでク ローズアップさせたい、というのが趣旨です。なぜなら、多くの日本人、とくに中高 年以上の人々が、そのことを認識していないからです。そのことが、政治や経済や科 学技術、そして教育の分野で、的外れの議論が登場する原因ではないかと考えたから です。もちろん、フラーの思想に近づくために、ものの見方を少し変えて欲しいとい う願いもあります。 「美の文明」を創ろう  本書を作ろうと思った動機の一つに、国際日本文化研究センターの川勝平太教授の 著作があります。一言で言うのは無謀ですが、それは「日本は美の文明を求めるべき だ」というものです。少し長いのですが、『敵を作る文明 和をなす文明』(川勝平 太/安田喜憲著、PHP研究所)から引用させていただきます。  ならば日本は一年間でどれだけの富を作っているか? 日本のGDPは年間五〇〇 兆円にも及ぶ。だが、富士山はいくらか、というのはGDP主義者にとってはバカげ た問いである。しかし、富士山に代表される日本の「美しい山々」は日本の富である。 日本列島の山や森が生み出す「美しい水」も間違いなく富であるが、富士山を売って アメリカにもっていくことができないように、日本の風土や伝統、風景、四方を山に 囲まれた京都の景観など、こういったものは明らかにGDPでは計れない別の価値を もつ。 ……  日本にはGDPに換算できない富が数えきれないほどある。GDPとは違う、しか もそれに勝る価値観をつくりださなければならない。わたしはそれは感動量だと思う。 これは測れない。だが、現実にはある。そしてその価値観を信じ、感動できるような 国のたたずまいづくりを実現できないかぎり、この国は永久にアメリカに振り回され、 円とドルの為替相場を気にする国にとどまるであろう。 先進国四つ分の国・日本  私はよく「いまの日本は金本位制だ」と冗談を言います。おそらく本音では、いま の日本人が最も大事だと考えているのはお金でしょう。確かに経済発展とともに日本 は膨大な金融資産を抱える国となりました。お金がなければモノが買えませんし、と くに都会では生きていくのも不自由です。でも、日本だって、地方都市に住めば、都 会ほどお金はなくても昔とくらべればはるかに豊かな生活が送れます。  つまり、単純に「富=お金」ではないと思いますし、もし日本にお金がたくさんあ るのなら、それをお金として持っているより富の形に変えていくほうが賢明のような 気がします。GDPで見れば、日本はヨーロッパ先進国が四つ集まった大きな国です。 川勝教授は、森の国(北海道+東北)、平野の国(関東)、山の国(中部東海)、海 の国(近畿以西の西日本)という区分を提唱されていますが、これら四つの国すべて がだいたいヨーロッパ先進諸国に相当しているのです。こう考えたほうがはるかに実 感を持てます。  そして、平野の国の鎮守の杜・那須地区に新しい首都を建設しようと提唱されてい ます。少なくとも、現実のデータをあわせ見る限り、きわめて妥当な考え方だと思い ます。日本のお金を米国債という返済される保証のない紙切れに流すのはほどほどに して、「美の国づくり」というみずからへの投資に回すべきではないでしょうか。  「まえがき」で述べたように、データはできるだけ絞りました。それによるマイナ ス面は読者の批判に委ねたいと思います。最後に、多くの助言をいただいた同僚の鳴 瀬久夫氏と、さまざまなアドバイスをいただいたたくさんの友人に感謝の意を表しま す。                                 松尾義之 二〇〇四年八月






    白日社トップページに戻る